ジョニーエンジェル Johnny Angel授業に歌をJohnny Angel ジョニーエンジェル ♪カーペンターズ(Carpenters) オリジナルは1962年、シェリー・フェブレイのヒット曲。アメリカABCのドラマThe Donna Reed Show(1958-1966)の劇中歌。カーペンターズがカバーすると,素敵な曲になるのは,編曲する兄のリチャードの才能のおかげなのでしょう。 今回のこの歌を4つの観点で展開します。 1)英語文化で展開:歌詞の中で出てくる語彙を2つ取りあげました。 a) lovely「愛らしい」「カワイイ」:名詞に-ly「みたい」「~っぽい」をつけて形容詞になる語にはfriendly「(友だちみたいに)友好的な」などがありますが,「この語は(米語では)女性語ですから男性は使わないように!」と,生徒に伝えました。スピーチレベルを伝えることは文化を伝えることですから,こういう機会に話しておきたいですね。 b) fellow「ヤツ」:この語は『ロングマン英英』ではold-fashionedで,a manの意味。皆さんは誕生日の歌で,Happy Birthday to Youの次に有名な歌,ご存じでしょうか? fellowが出てくるので,取り上げました。 For he's a jolly good fellow. …というのは,彼は陽気で良いヤツだ Which nobody can deny. それを誰も否定できない。 「フォァ ヒーザ ジョリ グッ フェーロゥ」 「ウィッチ ノゥバディ キャン ディナイ」 高2の授業では,この歌をまず声に出して歌ってもらいましたが,知っている人が一人もいなかったというのは奇異なことだと感じます。先日は,動詞句(phrasal verbs)を取り上げた際,Polly put the kettle on. Sukey, take it off again.(ポリー,やかんをかけなさい。スーキー,やかんをはずしなさい)を歌って,1人だけ知っている生徒がいて,ホッとしました。英語文化圏で有名な歌や英詩は授業で紹介したいですね。 授業ではa man「男」の言い換えがfellow「奴(やつ)」「輩(やから)」という連想から,one「もの」やthing「物・事」のinformalな言い方がstuff「ヤツ」だと紹介しました。私の願いですが,女性[特に,教員を含む公の前で話すことが多い女性]には「ヤツ」ではなく「もの」や「~の」という言い方をしてほしい。聞いていて悲しい気持ちになります。 例文)I’ve got some sticky stuff on my shoe.「ねばねばしたヤツが靴についている」(ロングマン英英) (この例文で,言い換えると,something sticky「何かネバネバしているもの」になる) 昨今,老若男女関係なく,教員で「ヤバイ」「マジ」と言う人がいて,情けない限りです。その昔(20年前),「なにげに」と言った若い教員に「『なにげに』じゃなくて『なにげなく』でしょ!」と一喝した年上の先生がいらっしゃいましたが,見逃さずに注意された姿勢に今改めて共感を覚えます。私も職場で「ヤバイ」の一掃運動を進行中ですが,難航しています(私は「マズイ」「問題だ」と言い換えています)。まず,言語を扱う英語教員から自覚してほしいです。 2)ライムで展開: ジョニーエンジェル どんなに私は彼を欲しているか 彼は私が抗えない何かを持っている しかし、彼は 私が存在することを知りさえしない 「英語にはrhyme[ライム:韻を踏む]の習慣があります。日本語の人達は五七五七七のなかに言葉を収めることに心を砕いてきましたが,英語の人達,ヨーロッパや中国もですが,言葉の音を揃えようと工夫してきました。Time and tide wait for no man.(時間と潮の満ち引きは誰も待たない→歳月人を待たず)のように最初の音を揃える【頭韻】とTwinkle, twinkle, little star. How I wonder what you are.のように最後の音を揃える【脚韻】があります。existは,どの単語と揃えていますか。」と問いかけ,「existという単語を使っているのは,resistと韻を踏むためです。ただ単に『彼は魅力的だ』ならHe is attractive.でも良い,また『私がいることに気がつかない』ならHe doesn’t realize that I am here.でも良いけれど,resist / existで韻を踏んで『上手い』と言わせたいので堅苦しいこの2語を選んだのです。」と解説。 3)語法で展開:concentrate on~「~に集中する」 ほかの人たちが 私をデートに誘うけど 座って待っているの。 私はむしろ集中したい ジョニーエンジェルに。 なぜなら私は彼を愛している look at ~「~を見る」,wait for ~「~を待つ」など,自動詞+前置詞で覚えること,また,wait for ~「~を(求めて)待つ」とlook for ~(~を求めて見る)→「~を探す」は,for ~「~を(求めて)」という同じ前置詞の意味でグループ化すること,そしてstand for ~(~として存在する)→「~をあらわす」のforはas / for「~として」の意味で別のグループであることを提示。 concentrate on~のon(uponと代替可)は【方向をあらわす前置詞】で, concentrate on~「~に集中する」 look down on ~(~を見下(みお)ろす)→「~を見下(みくだ)す」 (↑昨今の流行語「上から目線」ですね!) とグループ化できる。 4)内容で展開:以下の2つコメントしました。 a)「サザンオールスターズの桑田佳祐さんのお姉さんが好きだったという曲だったとラジオ番組で桑田さんが話していました。」 桑田さんの今があるのはセンスの良いお姉さんの影響も大きかったようです。 b)「エンジェルという名前を聞くと、トマス・ハーディーの小説『テス』を私は思い出します。」『テス』ではTessとAngelの2人は悲劇的な結末でした。歌詞にあるように,How lovely Heaven will be!だとしても,その前に私個人としては愛する人と現世での歓びを共有したいです…。日本語で言えば「共白髪」[ともしらが:共に白髪の生えるまで]です,と生徒に話したのですが,分かったかな? そのためには特定秘密保護法成立を12/6に許してしまった不穏な風潮を看過しないこと! 12/8真珠湾攻撃の日に原稿を書いている今,決意を新たにしています。 |